僕はブロンプトンにかなり乗ります。2008年に購入して丸5年経過しましたが平均して年間6,000kmは乗っている計算になります。週末のサイクリングだけでこれだけの距離になった訳では無く、半分以上は通勤です。
今は片道18km強をブロンプトンで自転車通勤しています。会社に服装の規定があるのでスーツかそれに類する格好で乗っています。以前は会社の駐輪場が完全に屋内だったので、雨が降っていても風が強くなければ自転車通勤をしていました。現在は駐輪場が野外なので、一日中自転車を雨曝しにするのが嫌で長く雨が降る日は自転車通勤をしていません。
風さえ無ければ雨の日に自転車に乗るのは好きです。晴れていれば都心は何時でも人が多く、車道を走行するとは言え歩道を行く人や不慣れな自転車通勤者に対して常に気を配って走行しなければなりません。雨の日はこの大量の人々が雲散霧消するのです。但し雨の日は視界が悪くなるので自動車に対して車道上で自分自身が目立つ様にした方が安全です。なので僕が使っているポンチョの色は蛍光オレンジです。ツーリングパニアに被せるレインカバーも黄緑で、この2つは夜でも非常に目立ちます。
ポンチョは上から被っているだけで下側は大きく開いているので比較的蒸れません。湿気の多い時期でも気にせず着用できます。ポンチョが使えるのは泥除けのお陰です。泥除けがなければ前輪が巻き上げる泥水が丁度下側の開口部に跳ねて服が汚れてしまいます。また前輪の後端に付いている大きなマッドフラップも、実際に雨の中を走ってみるとその恩恵が良く分かります。特に水溜りに突っ込んでしまった時はマッドフラップが無ければ膝から下がかなり汚れてしまうでしょう。
通勤をしていて——といっても通勤に限りませんが——特に便利に感じるのはブロンプトンのフロントバッグのシステムです。鞄を背負ったりするのではなく、自転車側に取り付けた方が楽だというのは言うまでもありません。それだけであれば何らかの形で荷台を取り付けた自転車と同じです。
第一に優れている点はフロントバッグを固定するのがハンドルやフォークではなく、フレームだという事です。ハンドルを左右に振ってもフロントバッグはその動きに同期して動く事はありません。従って前に重い荷物を乗せても、それ程ハンドル捌きに影響を与えないのです。これはタイヤからハンドルまでの距離が長い小径車ならではの設計です。車輪が大きい場合はタイヤとハンドルの距離が近い為、この方法でハンドル前面に荷物を置くとハンドルを旋回した時に荷物とハンドルが干渉してしまいます。回避するには荷台全体を前方に出すしかありません。
このフレームにフロントキャリアを固定するという方法はブロンプトンにはじまった事ではありません。クラシックモールトンにも使われていますから1960年代には存在した方法です。最近ではブロンプトンのフロントキャリアシステムの成功を受けたのか、はたまた別の要因かは分かりませんがルイガノの小径車やダホンの折り畳み自転車でも同じ様にフレームにフロントキャリアを固定する方法が採用されています。しかし後追いのルイガノやダホンのフロントキャリアはまだまだ練り込みが甘い所があるように見えます。ブロンプトンのフロントバッグが優れているもう一つの点に関する考察がルイガノやダホンのシステムでは抜けているからです。
その第二に優れている点は、ブロンプトンのフロントバッグは自転車にバッグを取り付けている時の利点だけを考えているのではなく、そのバッグを自転車から取り外して持ち運ぶ事も十分に考慮している事です。バッグを外した時、フレーム側に残るのは小さなアダプタとなるブロックだけですから荷台が邪魔になる事はありません。バッグ自体もストラップや柄があるので簡単に持ち運べます(と言ってもバッグにはアルミのフレームが組み込まれているので重いのが難点です)。言わばリクセンカウルに代表されるアダプタを使ったバッグの取り外しとモールトンのフロントキャリアの良い所を合わせた設計です。
ミズタニが扱かうブロンプトンは2012年型からリアキャリアが最初から付属している物が無くなりました。リアキャリアが欲しい場合は2万円近い代金を支払って後付けする必要があります。
折り畳んだ際の安定性を求めてこのキャリアを付ける人がいますが、このキャリアを荷台として使わないのは非常に勿体無いと思います。付属しているゴム紐が使い易い事もあってこれまた便利なのです。フロントバッグにはあまり大きい物は収納できませんが、リアキャリアであれば上記の写真の様にかなり大きな物も運ぶ事ができます(2つ目の写真の荷台に積んであるのはスキャナ・プリンタの複合機の箱です)。僕は灯油ストーブをホームセンタで購入した時もブロンプトンのリアキャリアに積んで持ち帰りました。車輪が小さくキャリアの位置も低いので重い物を乗せてもそれ程重心が高くならないのかもしれません(と言っても自転車の重心の高さに対して支配的なのは乗っている人間の体重ですけれど)。
リアキャリアについて言及する時に意外と見過せないのが、純正のゴム紐です。片側に樹脂のフックが付いていてゴム紐は二重になっています。この二重になっている所が味噌です。純正リアキャリアにはゴムを掛ける突起が付いています(2011年型から採用された新キャリアなら左右それぞれに2つで合計4つの突起、それまでの旧型なら左右1つずつで合計2つの突起)。これを利用すると純正のゴム紐2本で荷物の前後左右を抑える事ができます。
ダイナモライトはブロンプトンを購入した時から愛用しています。M3Rを選んだのはキャリアが付いている事よりもダイナモと前照灯、尾灯が付属している事が重要な点でした。4年の間に3種類のボトルダイナモを使いました。最初から付属していたアクサの物は1年程で壊れました。次に使ったブッシュ&ミュラーの物はタイヤが雨に濡れると空転してしまうので交換しました。ノードリヒトは本体の剛性が高過ぎるのかタイヤから伝わる振動がダイナモステイにもろに伝わってしまい2度もステイが折れたので使用を止めました。
現在ではシュミットのハブダイナモを使っていますが極めて快適です。重量の面から言えば電池式のライトを使った方が有利なのは間違いないと思いますが、通勤で毎日の様に使うと電池の残量を気にしないで良いというのは本当に気楽です。
前照灯も今はブッシュ&ミュラーのルモテックサイオを使っているので、電球切れも無いですし、輝度も高いので街灯の無い場所も視界に不安を感じずに走る事ができます。
ダイナモ発電の電装を使う様になってから夜のサイクリングが好きになりました。昼間よりは人も少なく静かですし、夏であっても夜ならば日差しが無い分過し易いというのもあります。
ロードレーサやクロスバイク、MTBといった自転車に乗っている人達にはダイナモ発電による電装はあまり評価されていません。僕はブロンプトンに関する情報を国内外で収集していますが、日本ではブロンプトン乗りの間でもダイナモは注目されているとは言えないでしょう。一方海外ではことハブダイナモの利用率は日本に比べてかなり高いのは間違いないでしょう。日々の実用に供する乗り物である自転車にとって自家発電機構はもっと評価されて良いと思いますが、やはり日本では安価で粗悪なママチャリに付いているダイナモの印象が拭えないのでしょうか。
兎に角言える事はブロンプトンは週末のちょっとしたサイクリングにだけ使うのは勿体無いという事です。現在主として流通している折り畳み自転車の中では最も実用的な自転車の1つというのは間違いありません。