Bromptonの前後の泥除けの後端には、マッドフラップが付いています。Brompton所有者のブログを見ていると、時々『気付いた時には後のマッドフラップが脱落して無くなっていた』なんてのを見掛けます。多くのBrompton乗りの人は、このマッドフラップが無くても良いと思っているようです(中には自分で外してしまう人もいる)。
さてこのマッドフラップですが、前のマッドフラップの効用は余り深く考えないでも分かります。試しに前マッドフラップを外して20km/h弱の速度で水溜まりに突込んでみると良いでしょう。思い切り、ボトムブラケット周辺(つまり靴や足首付近)に水が跳ねる筈です。
これと比べると効果の分かり辛い後マッドフラップですが、当然これが付いているのにも理由があります。そもそも、この後マッドフラップはMark 2と呼ばれる2000年以前に出荷していたモデルには付いていませんでした。以下の写真を見ると分かります。
(Brompton本社のサイトにある画像へ直リンク)
この事について、Davide Henshawの『Brompton Bicycle』にも、Mark 2からMark 3への変更点に触れた項に記述があります。
"Some of the changes, like a rear mudflap, might seem insignificant, but they were important. For years, owners had grumbled about the `Brompton Stripe' - a thin stain of mud thrown onto the rider's back by the rear tire." (p72)
適当な和訳
「(Mark 3には)幾つかの変更点がありました。例えば後マッドフラップです。一見大した事が無いように見えますが、これは重要でした。長年、(Bromptonの)所有者には不満がありました。後輪によって背中に跳ね上げられ乗り手の背中を覆う泥汚れ、『Bromptonの縞模様』と呼ばれるものです。」
M3Lを横から見てみるとこれは良く分かります。後輪の後端から始まってマッドフラップの先端を通る直線(下記画像の赤い線)、後輪の後端から始まって泥除けの先端を通る直線(下記画像の水色の線)を描いてみると、よりはっきりします。
(ミズタニのサイトにあるM3L画像を借用しました)
僕はこれを読んだ時に1つ疑問を感じました。何故、リッチー氏は単純に泥除けを長くするのではなく、その後端にマッドフラップを付ける事で解決を計ったのでしょうか。泥除けを後輪の後端まで延せば問題は解決する筈です。そうすれば、マッドフラップが知らない内に脱落したりする事も無くなるし、より良さそうな気がします。
しばらく自分のBromptonを眺めていてリッチー氏がマッドフラップという解決方法を選択した理由が分かりました。「折りたたみ」です。
Bromptonは後輪(というかリアフレーム全体)をメインフレームの下に回し入れて畳みます。この後輪を回し入れる時、後輪の後端は地面を擦る様に動くのです。従って、もし泥除けが後輪後端まで伸びていると、この時に泥除けの先端は地面によってガリガリと削られてしまうでしょう。場合によっては泥除けが曲ったり折れたりするかもしれません。
これが弾性のあるゴムのマッドフラップであれば、地面に擦れてもそういう事にはなりません。
非常に良く考えられています。この様にBromptonは細かい部品1つ取っても極めて注意深く設計されているので無駄な部品は無いと言っても過言では無いでしょう。
後タイヤを交換しながらそんな事を考えたのでした。