- 書名
- 逆さに咲いた薔薇
- 著者
- 氷川透
- 出版
- 光文社 カッパ・ノベルス
- 価格
- 800円
- ISBN
- 4-334-07582-7
- bk1
- http://www.bk1.co.jp/product/2481147
本日読了。氷川透さんの別シリーズに登場した祐天寺美帆が《名探偵》役を務めています。氷川さんの書籍化された作品は殆ど読んでいますが、そこから受ける印象は緻密で綿密、解決に至る論理に粗がなくて煮詰められています。回りくどいと評する人もきっといるでしょう。しかし本書では、非常にロジックが粗いですね。《名探偵》のキャラクタによるところが大きいのかもしれません。祐天寺美帆がワトソン役たる刑事に時折ヒントを与えるのですが、そのヒントが読者には唐突かつ奇抜でさっぱり意味が分かりません。まるでフェル博士のようです。扱う事柄――トリックというか犯行に至る論理――は、とても良いものだと感じただけに残念です。
本書の感想からは外れますが、ちょっと気になった事があります。氷川さんの作品にはよく《名探偵》が登場します。《探偵》ではなくて、です。そして登場人物も「あなたは名探偵だ」とか「私は名探偵なんかじゃない」といった発言や内省をしたりします。僕はこれらの発言をとても不自然だと考えていました。ミステリ批評以外の文脈で《名探偵》なんて言葉は使いませんよね。まだ考えはまとまっていないのですが《名探偵》という言葉を登場人物に意識させるのは、後期クイーン問題解決への試みなんじゃないでしょうか。もうちょっと考えがまとまったら、改めて論じるかもしれません。
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