「奥が深い症候群」とはnamazuやmigemoの作者、あるいは『Binary Hacks』のコントリビュータとして知られる高林哲さんが考えた、ソフトウェアエンジニアリング周辺に蔓延る習慣の事です。以下は、上記リンクにある「奥が深い症候群」のD&D版パロディです。
D&Dをプレイしている、何でこんなことを覚えないといけないのだろうか、とストレスを感じつつも、それを覚えないとキャラクタを使いこなすことができないためにしぶしぶ覚えなければならない、といった類いのノウハウは多い。そうした雑多なノウハウのことを、本来は知りたくもないノウハウという意味で、私はバッドノウハウと呼んでいる。
バッドノウハウは、D&Dの複雑怪奇な運用法が歴史的に引きずられ、根本的な改善は行われないまま、そのノウハウが文書によって受け継がれることによって蓄積が進行する。DD&D上で広く使われている運用法としてはファイターの動き、ローグの働き、ウィザードの立ち位置などは、役に立つノウハウであると同時に、その複雑怪奇な仕様によって長年に渡ってユーザを苦しめ続け、バッドノウハウの温床として悪名が名高い。こうした運用法に関するWeb上の情報などの充実は、バッドノウハウが文書によって受け継がれていくという性質をよく表しているといえる。
バッドノウハウがはびこる大きな理由は、D&Dデザイナに使いやすさに対するセンスを欠如していたり、場当たり的なルール拡張が度重なって行われたり、単に売上を伸ばすためにルールを決めてしまうといったところにあるが、別の理由によるものも根深いと私は考えている。それは、そういった分かりにくい運用法を使いこなす事に対して、「奥が深い」といって喜びを見出す「奥が深い症候群」によるものである。
一般に、マニアという人種は普通の人にとってはどうでもいいような知識を熱心に覚えることに喜びを見出すものだが、これがD&Dマニアになると「奥が深い」といってバッドノウハウを喜んで覚える「奥が深い症候群」になりやすいようである。また、バッドノウハウを薀蓄として披露することによって、より一層の喜びを得るという心理的な働きも「奥が深い症候群」を進行させる一因となっているようだ。
本来使いにくい運用ノウハウが長年に渡って「奥が深い」定番としてありがたがられ、そのバッドノウハウの習得にユーザが不毛な時間を費やすことを強いられるのは、この「奥が深い症候群」に根深い原因があるのではないかと考えている。