2004年10月26日火曜日

Linuxのメインストリーム

 武藤健志さんの日記経由で、『日本におけるFedoraの紹介のされ方にもの申す』という文書(以後『もの申す』と略)を発見した。
 まずは上記リンク先を読んでほしい。『もの申す』で関根達夫さんが主張されている事は、もっともだと思う。だた、折角PC-UNIX系の著書を多数発表されている関根さんなのだから、異議を唱えるだけでなくて改善案も出してほしかった。

 Red Hatがコンシューマから手を引いた今、日本ではメインストリームとなるLinuxディストリビューションを欠いているように思う。しかしながら、依然としてある主の「Linux流行(オープンソース流行だろうか?)」は続いており、それに追従した各出版社がLinuxを題材にした書籍を多数出版している。

 実は僕自身1年前まで出版社に勤めており、その編集部でLinux系書籍の編集を担当していたが、少なくともその現場には僕を含めてLinuxに通じている編集者は1人もいなかった。そこへ流れてくるのは、表層的な「FedoraはRed Hat Linuxの後継だ」という噂なのである。当然それを聞いた編集部は「では次回のLinux本はFedoraでいこう」と安直に、その噂を信じ、Fedora自体の中身を検証する事なく「メジャなディストリビューションでなければ販売数が伸びない」という理由を盾に企画を進めてしまう。

 そこには長期的な視線は無い。Fedoraが「開発者向け」ディストリビューションだと言う事を知らないのだろうか。標準のカーネルは2.6系だし、システムロケールはUTF-8だし、かなり挑戦的なディストリビューションなのである、Fedoraは。だいたいFedoraのメンテナンス(サポート)期間は極めて短かい。Fedora Regacy Projectも動きが鈍く、とても頼れる状態ではないのだ。
 例えばサポートが終了したFedora Core 2のカーネルにセキュリティホールが発見されたとして、up2dateyumapt-getもできずに自力でThe Linux Kernel Archivesから、最新版カーネルを取得して、自力でカーネルアップデートできる初心者がどれだけいるのか。全く無責任極まりない。
 にも関わらず、編集部内では「ユーザの利便性を考えるならメジャなディストリビューション、インストールの簡単なディストリビューションを選ぶべきだ」というお為ごかしが蔓延し、編集者達は「我々はユーザの事を考えている」と勘違いしているのだ。

 どのディストリビューションとは言わないが、開発者向けなぞではなく、安定したサポートが望めるディストリビューションを書籍の題材として選択すべきなんじゃないだろうか。例えそのインストーラがCUIしか用意されておらず、とっつき難くても――いやとっつき難いからこそ、書籍のサポートが必要なんじゃないだろうか――Linuxを使って半年後、1年後にもそのユーザが安心して使えるディストリビューションこそを紹介してほしいものだ。



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