イギリスの文豪チャールズ・ディケンズと同時代の作家コリンズによる長大な推理小説です。コリンズは卓抜した構成力を持つ小説家で、本書でもその筆力を遺憾なく発揮してます。
本格推理小説を批判する言葉として「人物が描けていない」というものがありますが、この小説に関して言えばそれは当てはまりません。筆者は様々な登場人物を色鮮やかに描き出し、物語に華を添えています。分けても、最初に視点人物として登場する執事のベタレッジ翁は、物語を支える重要な人物として生き生きと描かれています。
類い稀な宝石・月長石を巡るミステリは二転三転し、幾多の回答を経て最終的な真相へと至ります。コリンズの滑かな筆致は、推理小説家・論評家として有名なセイヤーズをして『最良の探偵小説の一つ』と言わしめるだけの事はあります。
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