博覧強記の化学博士アシモフによる推理小説の佳作です。この物語の主人公は有機化学を専攻する大学の助教授ですから、筆者が来歴を活かして小説を書いていることは明白です。
1958年に発刊されたミステリなのですが、そう考えると驚異的な程ラディカルな小説だと思います。全体的な事から言及すれば、それぞれの描写が全然古くささを感じさせない点がまず1つです。登場するテクノロジィのレベルに注意しなければ50年も前のアメリカを舞台にした物語だとは想像できません。第2に、本書で描かれている殺人の動機が秀逸。その動機に読者が納得できるかどうかはともかく、50年前のミステリと言えば動機は、金(権力)、女、怨恨のいずれかというのが当たり前だったのです。
これだけの良作が最近まで絶版だったというのは不思議ですね。
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