文字だけで構成された書籍を購入して、よもや絵画を観賞する事になるとは思いませんでした。
と書くと「何を大袈裟に」と思う人も多いでしょう。実際大袈裟に書いているわけですが、クノーによる99編の文章は単なる文字の集合としての文と言い切る事のできない赴きがあります。中には、その文章単一では読んで意味を理解する事が困難なものすらあります。
99編全て、表わしている事象は1つです。しかしながら全部が違った文体で表現される事で、読者の頭の中に広がる光景はそれぞれ異なったものになるでしょう。文字という名の絵の具を使って、99のカンバスに描かれた同一の題材を持つ異なった絵、それが本書なのではないでしょうか。
本書を読んで何よりも驚くのはクノーの筆致ではなく、翻訳者の努力かもしれません。このオリジナリティ溢れる(溢れ過ぎる)99の文章を翻訳する作業は、困難を極めたでしょう。こんな面白い本を日本語で読めるのはラッキィな事です。
……bk1に投稿する事を意識し過ぎだな自分。
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