探偵小説の始祖として有名なポオの全集です。全4巻からなる全集の1巻たる本書では、主としてポオの書いた怪奇、不条理小説を扱っています。
ポオと言えば、後世の多くの作家に影響を与えたアメリカ屈指の文豪と言われています。モルグ街しかしらなかった僕は、最初「文豪」というイメージが湧かずに不思議だったのですが、本書を読んで文豪の文豪たる所以が分かった気がします。
何よりもその筆致が凄いのです。単語の選び方、文の繋ぎ方、物語の機序どれをとっても圧倒的です。だいたい描かれている状況や物語自体はとても奇異なのに、それが不自然だと目に映らないのは、ポオの類い稀な筆力のお陰でしょう。
日本なら夢野久作に近い作風だと言えます。現代の作家なら筒井康隆でしょうか。こういった不条理、不思議をあくまで自然に描ける能力というのは特異な才能なんだと思います。
多少翻訳の悪さが目に付く所もありますが、さまざまなジャンルを跨ぐポオの文才を味わってみてはいかがでしょうか。
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