やかまし屋の名探偵ヘンリ・メリヴェール卿が活躍するシリーズです。何よりも本書は、その密室トリックが有名です。また本書の、結末に至る道筋はカーという作家の緻密さを表わしているように思えます。
まず伏線の張り方が上手です。地の文だけでなく、登場人物の発言一つとっても非常に考え抜かれているように感じます。状況と登場人物の動きがトリック解決に綿密に関係していて、最後の部分でそれらが一挙に明かされるのは爽快です。
いつものドタバタ劇も健在で、メリヴェール卿はのっけから大蛇とのチキンレースを展開しています。また本書には、極めて性根の悪い女商人が登場するのですが、これがなんとも嫌らしく描かれています。カーは文章ではなくプロットで勝負する作家だと思われがちですが、なかなかどうして人物描写も上手です。
何より本書で使われている密室トリックは、構造としては単純で、とても簡単に理解できるものです。そう言った意味でカー最初の一冊には丁度良いのでは無いでしょうか。
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