2006年6月8日木曜日

スポルティーフへの憧れ

 スポルティーフいいよ! スポルティーフ!! フルオーダのスポルティーフがほしい……軽く20万円くらいするけどな。

 と僕が叫んでも、そもそもこれを読む人の95%は『スポルティーフ』とは何ぞや、という所でしょう。長くなるかもしれませんが、スポルティーフが何かを説明してみます。

 自転車にはいろいろな車種があります。現在、その2大カテゴリといえば――異論が多々ある事を承知で断言するならば――ロードレーサとマウンテンバイクでしょう。これらは以下のような特徴があります。

  • ロードレーサ

     700Cと呼ばれる28インチ程の径のホイールを装備していて、19-23mm幅の細いスリックタイヤで舗装路を快走する自転車。クロスレシオ(最も重いギアと最も軽いギアの差が小さい)のギア比。ドロップハンドルに、最近のモデルならデュアルコントロールレバーを装備。泥除けなど、余分な装備は一切無し。ブレーキはサイドプルブレーキ。

  • マウンテンバイク

     26HEと呼ばれる26インチの径のホイールを装備していて、30-50mm幅の太いブロック(スパイク)タイヤで山道を走る自転車。ワイドレシオ(最も重いギアと最も軽いギアの差が大きい)のギア比。フラットハンドルで、前後にサスペンションを装備している事も多い。泥除けはついていません。ブレーキはVブレーキかディスクブレーキ。

 スポルティーフは、この2つの内ロードレーサを源流に持つ車種です。また、スポルティーフと似た車種にランドナというのがありますが、こっちのほうが有名かもしれません。

  • ランドナ

     650Aや650Bと呼ばれる26インチ程の径のホイールを装備していて、30-42mm幅の太いセミスリックタイヤで、オンロード・オフロードを問わずに走る自転車です。2泊3日から1ヶ月くらいの長距離ツーリング向けに作られていて、車体は頑丈でロードレーサに比べれば重くなっています。また泥除けは必須です。テント等大量の荷物を運ぶ必要があるので前後にキャリア(荷台)がついています。ハンドルはドロップハンドルで、シフタはダウンチューブにWレバーというのが標準的な姿です。ブレーキはカンチブレーキ。
     ランドナには亜種が幾つかあって、ひとつは日本一周や世界一周といった超長距離ツーリング向けに作られた車種であるキャンピング。これはフォーサイド(four side)と呼ばれる特大のキャリアを装備していて車体も頑丈です。もうひとつはパスハンタというものです。英語で綴るとpass hunterとなるのですが、意味は「峠を狩る者」。その名の通り峠を攻める為の車種です。長い坂道を登るために、ランドナよりも軽めのギアが多く、林道や廃道を通る事も多い為に自転車を担ぐ事も考慮して設計されていたりします。

 感覚的にスポルティーフは、このランドナとロードレーサの中間的な存在です。

  • スポルティーフ

     ロードレーサと同じ700C径のホイール。25-30mm幅のスリックタイヤに泥除けがついています。ギア比はロードレーサよりは若干ワイドです。フロントキャリアが付いていて、1泊2日程度のツーリングにも向いています。ハンドルはドロップハンドル、シフタはダウンチューブにWレバーというのはランドナと同じです。ブレーキはセンタプルかカンチブレーキ。
     イメージとしては街中を軽快に走る自転車。フロントバックをつければちょっとした自転車旅行もできる、という所でしょうか。

 とても平たく言うと、ロードレーサに泥除けを付けたものがスポルティーフです。またランドナとスポルティーフのシルエットは似ています。素人が遠目に見たら、殆ど違いはわからないでしょう。クラブモデルといわれる、ランドナ以上にスポルティーフに近い車種もありますが、これだと僕から見ても違いがわかりません。

 百聞は一見に如かず。写真を見てください。

 さて、スポルティーフがどういう自転車かなんとなくでも分かってもらえたでしょうか。

 そんなスポルティーフに憧れめいた感情を持っているわけですが、ずばり何がいいのか?
 ――フォルム、ですね。造形が美しいと僕は思うのです。ランドナにも似たような憧憬を持ってはいるのですが、如何せんランドナ長距離ツーリングメインの自転車です。街乗りが主の僕ではその性能を十全に生かしきれません。それと、ランドナ用のパーツ(主としてホイールとタイヤ)は年々手に入りにくくなっているので、長く乗るには不安がつきまとう、というのもあります(*註)。

 マウンテンバイクなんかと違って、ランドナやスポルティーフは車種の歴史が古いので、スタイルは確立されていますし、技術的には枯れています。(枯れている、というのはこの場合、これ以上改良の余地がない程に完成されている、という意味。技術者がよく使う言葉です)
 元来が懐古主義――ミステリならカーやクイーン、SFならアシモフやハインライン、RPGならD&D、コンピュータならIBMという僕が懐古主義でなければなんだろう!――な僕は、その昔から守られてきた、伝統的な姿に憧れるわけです。

  • 註: ランドナは650Aや650Bという規格のタイヤを使うのが伝統的なスタイルです。しかし、その規格のタイヤやホイールが手に入りにくくなってきたので、最近では比較的それらの規格と径が近い26HE規格(主としてMTBに使われている規格)のタイヤを使ったランドナも増えています。26HEはママチャリ用規格の次に国内で普及してます。これならばパーツの入手性は700Cのロードレーサよりも良いくらいです。


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