2005年3月8日火曜日

【今日の読書】殺意/フランシス・アイルズ(アントニイ・バークリー)/創元推理文庫

 オースティン・フリーマンが『歌う白骨』で始めて使った、犯人の視点から犯罪を描く推理小説の形式。それが倒叙形式です。本書はそのスタイルを使った小説の中でも、特に三大倒叙と呼ばれる名作中の一つです。
 人物を描くのが得意なアイルズによる犯人の心理描写は秀逸です。犯行を決意するまでの逡巡、おどおどした態度、犯行に及んだ後徐々に大胆に、そして不遜になっていく犯人。法廷における攻防、それに伴なう主人公の感情の起伏。どれも克明に描写されています。
 そして最後、余りにも呆気なく訪れるどんでん返しにはビックリさせられました。アイルズ=バークリーはトリッキィな作風の小説家です。その面目躍如と言えるでしょう。


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