2025年5月22日木曜日

Morvra Nightshade:ジェレイントの長姉の物語




# 紅き祭壇の守護者

ティロニアン半島の厳しい旅の中で、ジェレイントの心に浮かぶもう一つの鮮明な記憶は、長姉モルヴラ・ナイトシェイドの姿だった。

モルヴラはジェレイントより3歳年上で、スカーレット・ブラザーフッドの中でも特別な地位を築いていた。彼女は若くして神殿に入り、クレリックとしての道を歩み始めた。しかし、彼女が仕えたのは通常の神々ではなく、スカーレット・ブラザーフッドの秘密の祭壇で崇拝される、より暗い力だった。

モルヴラは背が高く、姿勢が良く、常に威厳を漂わせていた。彼女の長い黒髪には早くも銀色の筋が入り始めており、それが彼女の鋭い顔立ちを引き立てていた。彼女は常に深紅と黒の祭服を身にまとい、首には銀の護符を下げていた。その護符には、スカーレット・ブラザーフッドの秘密の象徴が刻まれていた。

「力は知識から生まれ、知識は犠牲から生まれる」これはモルヴラがよく口にする言葉だった。彼女は秩序を重んじ、法に従うことを厳格に守る一方で、その法が何であるかについては独自の解釈を持っていた。彼女の道徳観は秩序にして邪悪であり、目的のためには手段を選ばない冷酷さを持っていた。

しかし、家族に対するモルヴラは別人のようだった。特に幼いジェレイントに対しては、驚くほど保護的で優しかった。彼女は彼の魔法の才能を早くから見抜き、それを育てるために多くの時間を割いた。

「あなたの中には特別な力が眠っている」と彼女はよくジェレイントに言った。「それは血の力よ。私たちの家系に流れる古い魔法の血の力なの。」

モルヴラは神殿での地位を急速に上昇させ、20代半ばには既に高位の司祭となっていた。彼女の儀式の腕前は評判が高く、特に予言と死者との交信に関しては並外れた才能を持っていた。彼女の成功は、スカーレット・ブラザーフッドの中でも珍しいことだった。女性が高位に上ることは稀だったからである。

ジェレイントが10歳の時、モルヴラは彼を初めて神殿の奥深くに連れて行った。そこで彼女は、スカーレット・ブラザーフッドの真の力の源について語った。「私たちの組織は単なる政治的な勢力ではないの」と彼女は言った。「私たちは古代の知識の守護者であり、失われた力の継承者なのよ。」

その日、モルヴラはジェレイントに小さな儀式を教えた。それは魔法の感覚を鋭くするための簡単な瞑想だった。「これはあなたの血の中に眠る力を目覚めさせる助けになるわ」と彼女は説明した。ジェレイントはその瞑想を毎日実践し、それが彼の魔法の才能を飛躍的に向上させたことに気づいた。

モルヴラはまた、「浅緋の式服」と「純血の錫杖」についての最初の手がかりをジェレイントに与えた人物でもあった。彼女は古代の予言書を持っており、それには二つの強力なアイテムが再び一つになったとき、スカーレット・ブラザーフッドの真の運命が明らかになると書かれていた。

「これらのアイテムは単なる力の道具ではないの」とモルヴラは言った。「それらは鍵なのよ。古代の知識と力への扉を開く鍵。そして、あなたはその扉を開くために選ばれた者かもしれない。」

ジェレイントが18歳で家を出る決意をした時、モルヴラは複雑な感情を抱いていた。彼女は弟の旅立ちを誇りに思う一方で、彼の安全を心配していた。彼女は彼に銀の護符を贈った。それは彼女が身につけているものと似ていたが、より古く、より強力な魔法が込められていた。

「これはあなたを守るでしょう」と彼女は言った。「そして、必要な時には私たちをつなぐ絆となるわ。」

モルヴラはまた、ティロニアン半島についての警告も与えた。「北の地には古い力が眠っている。しかし、それは危険な力よ。多くの者がその力を求めて命を落としてきた。あなたの母もその一人だったかもしれない。」

彼女はさらに続けた。「ティロニアン半島には、スカーレット・ブラザーフッドの古い敵が住んでいる。彼らは『冬の守護者』と呼ばれる秘密結社よ。彼らは『浅緋の式服』と『純血の錫杖』を分離し、隠したのかもしれない。彼らに注意して。」

ジェレイントが旅立った後、モルヴラはスカーレット・ブラザーフッドの中でさらに影響力を増していった。彼女は「紅き祭壇」と呼ばれる秘密の派閥の指導者となり、古代の儀式と失われた魔法の研究に専念した。彼女の真の目的は何だったのか?彼女はジェレイントの探求を本当に応援していたのか、それとも彼女自身の計画のために彼を利用しようとしていたのか?

ティロニアン半島の旅の中で、ジェレイントは時々、モルヴラから贈られた護符が温かくなるのを感じた。それは彼女が遠くから彼を見守っている証だった。そして、ある夜の夢の中で、彼は赤い祭服を着た姉の姿を見た。彼女は北の氷の城の前に立ち、何かを待っているようだった。

長姉モルヴラ・ナイトシェイドは、ジェレイントにとって導き手であり、保護者であり、時には謎そのものだった。彼女の真の目的と忠誠心は、彼が探し求める古代の秘密と深く結びついていた。

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