2004年6月29日火曜日

【今日の読書】ユダの窓/カーター・ディクスン/早川ミステリ文庫

 ヘンリー・メリヴェール卿が活躍するシリーズの中でも特に有名な作品。密室物の傑作として高い評価を受けています。また法廷物でもあり、作中でH・M卿は探偵としてだけでなく、法廷弁護士としても活躍します。

 ただ、これを密室物と言うとH・M卿に怒られてしまうんじゃないでしょうか。事件が発生した状況を(日本で言う)検察側が「密室」と言った事に対して「厳密には密室ではない」と猛烈に反論していますからね。

 で作品ですが、密室トリックは良く考えられていますが、沢山密室物を読んだ人ならば似たようなトリックには必ず出喰わす種類のものではあります。トリック自体も、それなりに魅力的ではあるのですが、何よりも絶体絶命だと思われる被告人の状況、そしてそれを少しずつH・M卿が次々と解きほぐしていく様が、この作品の主たる魅力なのではないでしょうか。

 作者自身が弁護士を目指していた事もあり、法廷のシーンは緊迫感があって良いです。やっぱり法廷物は緩急があって、楽しいですね。

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