昨日のエントリに続き、D&D3.5Eに於いて両手持ちスタイルが如何に暴虐の限りを尽くしているかを考えてみる。
おおまかに言って、戦士の戦闘スタイルは4つ乃至5つ考えられる。つまり、
- Weapon and shield style
- Two-handed weapon style
- Two-weapon style
- Archer style
- Unarmed style
この内、Unarmed styleはD&DではMonkの専売特許に近いので、ここでは言及しない。またArcher styleは、戦闘の場で戦線を構築しないという点で他のstyleと赴きを異にするので言及を避ける。上記5 style以外にもCavalier style、Throwing weapon style, One-handed single weapon styleなどが考えられるが、比較的稀なタイプだという事で除外した。
さて残った3つのスタイルだが、これらには《防御偏重》《攻撃偏重》という軸を与えると、きっちりとシリアルに接続する事が分かる。3スタイルの中では、Weapon and shieldのみが唯一Heavy or tower shieldを装備し得るという意味で、これが最も防御偏重であり、Animated属性のShieldのような魔法的な助けがなければ何如なるShieldも装備できないTwo-handed weaponが最も攻撃偏重になる。他方で魔法的手段を用いずともBucklerならば装備可能なTwo-weaponが両者の中間に位置する(Shield bashやArmor/Shield spikeを用いた変則Two-weaponは考慮しない)。
3スタイルの中でWeapon and shieldが、攻撃力の点では最弱であることは議論を待たない。という事で、ようやくTwo-handed style(THS)とTwo-weapon style(TWS)の比較に移る。まずは前提を確認しよう。
- Abilityは両者とも同じ(全てのAbilityは18とする)。
- Classは両者とも同じ(Ftrとする)。
- 装備はTHSはGreatsword、TWSはLongsword and short swordとし、nonmagical、non-masterworkの武器とする。
- Critical hitは考慮しない。
●ダメージの比較
まずは1レベル時の比較をしよう。THSはPower attack、TWSはTwo-weapon fightingのfeatを取得していると考える。両者のFull attack bonusとダメージは
THS: +5 greatsword 2d6+6(命中時の期待値合計13)
TWS: +3 longsword 1d8+4, +3 shortsword 1d6+2(命中時の期待値合計15)
となる。さて実際に命中率まで考慮した時のダメージ期待値は
命中率 × 命中時のダメージ期待値
で与えられる。つまり、THSの命中率をnとした場合、TWSのそれぞれの攻撃の命中率はn-0.1(THSに対して10%減少)である。従ってn=1(100%命中)とした時のダメージ期待値は
THS: 13
TWS: 13.5
となる。THSがPower attackを用いて命中を1下げ、ダメージを2上昇させた場合のダメージ期待値は
THS: 13.5
となり、TWSと同値となる。
次に6レベル時の比較を行なう。THSはPower attack、TWSはTwo-weapon fighting、Improved two-weapon fightingのfeatを取得していると考える。両者のFull attack bonusとダメージは
THS: +10/+5 greatsword 2d6+6(命中時の期待値合計26)
TWS: +8/+3 longsword 1d8+4, +8/+3 shortsword 1d6+2(命中時の期待値合計30)
である。Primary attackの命中確率n=1の時、Secondary attackの命中確率mはn-0.25なので0.75となる。これに基づき、ダメージ期待値を計算すると
THS: 22.75
TWS: 23.25
となる。THSがPower attackを用いて命中を2下げ、ダメージを4上昇させた場合のダメージ期待値は
THS: 26.35
になり、TWSを3.10上まわる。
次に11レベル時の比較を行なう。THSはPower attack、TWSはTwo-weapon fighting、Improved two-weapon fighting、Greater two-weapon fightingのfeatを取得していると考える。両者のFull attack bonusとダメージは
THS: +15/+10/+5 greatsword 2d6+6(命中時の期待値合計39)
TWS: +13/+8/+3 longsword 1d8+4, +13/+8/+3 shortsword 1d6+2(命中時の期待値合計45)
である。Primary attackの命中確率n=1の時、Secondary attackの命中確率m=n-0.25=0.75、Tertiary attackの命中確率lはm-0.25=n-0.5なので0.5となる。これに基づき、ダメージ期待値を計算すると
THS: 29.25
TWS: 29.25
となり、Power attackを使わずともTHS=TWSになる。更にTHSがPower attackを用いて命中を2下げ、ダメージを4上昇させた場合のダメージ期待値は
THS: 33.15...
になり、TWSを3.9上まわる。
●Featの比較
さてダメージの点では、Power attack持ちのTHSがTWSに対して有利である事が分かった。ちなみにTWSがPower attackを使うという選択肢もゼロではないが、TWSはPower attackと極めて相性が悪い(Light weaponではPower attackによるダメージ上昇は得られない)ので、比較するに値しない。
上の比較で用いた3つのレベル帯で、それぞれのスタイルに必要なFeatは
- 1レベル時
- THS: Power attack
- TWS: Two-weapon fighting
- 6レベル時
- THS: Power attack
- TWS: Two-weapon fighting, Improved two-weapon fighting
- 11レベル時
- THS: Power attack
- TWS: Two-weapon fighting, Improved two-weapon fighting, Greater two-weapon fighting
と圧倒的にTWSが不利になる。Two-weapon fighting系featは高いDexが必要になるので、取得が難しい事も不利な点である。
またダメージ比較の結果を見るにTHSならばPower attackのfeat1つで、TWSと同じかそれ以上のダメージを出す事ができると分かる。
●その他比較
THSとTWSを比べた時、こと高レベル域でTWSが不利だと感じる点は、武器にかけなければいけない金額である。THSならば1つの武器にお金を注ぎ込めば良いのに対して、TWSはそのスタイルを十全に活かしたいならば2つの武器にお金を注ぎ込む必要がある。つまり費用対効果の点でもTWSは圧倒的に不利なのだ。
●総括
このようにTHSとTWSを比較した場合、TWSに利する点は少ない。TWSで両手に同じ武器(Short sword二刀流など)やDouble head weaponを使った上で、Weapon focus、Weapon specialization、Improved criticalのようなfeatを取得していけば、両者のダメージ比較は違った結果になる(こういった理由でDragon magazine #310に掲載されたVariant fighterであるkensaiとTWSは相性が良い)。またComplete adventurerで追加されたPrestige class・Tempestになれば、また変った点も見えてくるだろう。
思うにTWSの生きる道は単純なダメージディーラではない。そんなものはTHSのBarbarianにでも任せておけば良いのだ(嗚呼、そのダメージ期待値たるや比較するのも恐しいが)。TWSは多様性を活かすべきだろう。片手にSlashing/Cold iron weapon、片手にBludgeoning/Adamantine weaponというように、様々な状況に対応できるようにすれば多少は希望があるかもしれない。